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日外会誌. 105(8): 459-463, 2004


特集

外科領域における再生医療の現況と展望

7.血管再生;組織工学的再生技術の現況と展望

東京女子医科大学日本心臓血圧研究所 心臓血管外科

新岡 俊治

I.内容要旨
近年,骨髄中に血管内皮細胞,血管平滑筋細胞の前駆細胞が証明された.これらを含む骨髄単核球成分を手術当日に採取し,それを播種した生体吸収性scaffoldを心臓外科領域で臨床使用している.現在までに経験した42例の早期一中期の成績を報告する.
対象と方法:42例の内訳は,①右心系(50mmHg以下)において,末梢性肺動脈狭窄または右室流出路狭窄に対してパッチとして使用:19例.②フォンタン手術時の下大静脈一肺動脈間の導管として使用:23例.手術当日,全身麻酔下に4-5ml/kgの骨髄液を腸骨より採取した.骨髄細胞の分離は通常の単核球成分分離法に準じて行い,生体吸収性ポリマーに播種後,外側面にフィブリン弼を塗抹し,細胞を固定した.グラフト評価は遠隔期エコー,造影CT, MRIで行った.結果:手術死亡なし.遠隔死亡1例(左心低形成症候群TCPC手術後心不全)認めたが,グラフトに関連する死亡ではなかった.急性期(約3-6カ月間)には抗凝固療法を施行した.慎重な経過観察を行っているが,急性期,中期に重篤な合併症は現在まで認めていない(最長4年).導管は現在まで全例で開存しているが,一例SVC閉塞に対するパッチ再建例では閉塞を認め,二例に肺動脈再狭窄を認め,カテーテル治療を行った.まとめ:骨髄細胞による再生血管の早期一中期成績は満足できるものであった.この方法は細胞培養を省略でき,より簡便に血管再生を達成できる可能性が高い.中期から遠隔期の結果がより重要であり,慎重な経過観察を継続する必要がある.

キーワード
ティッシュエンジニアリング, 再生医学, 血管, 自己骨髄細胞


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