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日外会誌. 105(4): 296-300, 2004


特集

Oncogenic emergencyとその対応

8.膵・胆道癌

岩手医科大学 第1外科

佐々木 亮孝 , 藤田 倫寛 , 武田 雄一郎 , 星川 浩一 , 高橋 正浩 , 舩渡 治 , 新田 浩幸 , 八重樫 泰法 , 斎藤 和好

I.内容要旨
膵・胆道癌のoncologic emergency,すなわち癌腫に起因した緊急処置となりうる疾患は,膵癌の十二指腸浸潤による消化管出血,十二指腸高度狭窄による通過障害,胆道癌では閉塞性黄疸に伴う急性胆管炎が臨床的に最もよく見られる.また,急性胆嚢炎で発症した胆嚢癌も臨床上,胆嚢炎の診断で緊急手術となることがある.この他,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)チューブの逸脱に伴う胆汁性腹膜炎や術後膵液漏による仮性動脈瘤破裂など膵・胆道癌術前術後管理中に緊急処置が必要になることがある.
膵・胆道癌におけるoncologic emergencyは一旦発生すると重篤な臓器機能不全を引き起こしやすいことや,腹部の他の領域とは違って病巣に直接アプローチして緊急に手術的に除去することが困難であることなどの特徴がある.したがって内視鏡検査や腹部超音波を用いた経皮的処置などの非手術的治療を第1に選択する.全身状態の改善が見られたなら癌の進展度と全身状態を検討し,可能であれば原病巣の外科切除を行う.急性胆嚢炎で発症した胆嚢癌は充分な検査ができずに胆嚢炎として緊急に胆嚢摘出術が行われることがあり,胆嚢癌の併存を念頭に置いて摘出標本を術中検索することが重要と考えられる.閉塞性黄疸を伴う膵・胆道癌症例に胆管炎を併発した場合は,急激に敗血症となることがあり,早急なドレナージ術が必要と考えられる.

キーワード
膵癌, 胆道癌, oncologic emergency, 緊急処置


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