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日外会誌. 105(4): 286-291, 2004


特集

Oncogenic emergencyとその対応

6.大腸癌

防衛医科大学校 外科学第1講座

上野 秀樹 , 橋口 陽二郎 , 小俣 二郎 , 望月 英隆

I.内容要旨
大腸癌症例におけるoncologic emergencyのうち,最も頻度の高い腸閉塞および穿孔につき,その対応を中心に概説した.
右側結腸癌における腸閉塞にはintestinal long tubeによる減圧にて,待期的な標準手術が可能である.これに対し左側の閉塞性大腸癌症例では,intestinal long tubeによる減圧が困難な場合が多く,経肛門的減圧チューブやstent留置により減圧をはかる.十分な減圧が不能である場合にも,術中腸管洗浄を併用することで1期手術を行いうる.分割手術が適応となる症例は,術中の循環動態が不安定な場合と,低栄養状態や全身衰弱が著しく,縫合不全の可能性が見込まれる場合であり,前者には閉塞部口側での人工肛門造設を,後者にはHartmann手術を初回術式として選択する.
穿孔性大腸癌症例の治療の鍵は,術式と敗血症対策の2点にある.刻々と変化する患者の状態の十分な把握及び術後状態の的確な予測が術式決定のうえで重要である.穿孔部を含むseptic focusの1期的切除が原則であるが,腹腔内汚染が高度な症例での1期的吻合後には高頻度に縫合不全を発生することに留意すべきである.閉塞性大腸炎による癌腫口側の穿孔症例においては,患者の状態が悪い場合には,穿孔部を含めた汚染創の完全切除+人工肛門造設のみ施行し,手術時間・手術侵襲を最小限にとどめる.十分な腹腔内洗浄,有効なドレナージが不可欠である.エンドトキシン吸着(PMX)や持続的血液濾過透析(CHDF)といった血液浄化方法が,敗血症性ショックの安定化や敗血症にともなう高サイトカイン血症に対して有効であることが認識されている.

キーワード
大腸癌, 緊急病態, 腸閉塞, 穿孔


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