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日外会誌. 105(4): 271-274, 2004


特集

Oncogenic emergencyとその対応

3.肺癌

東京医科大学 第1外科

中村 治彦 , 加藤 治文

I.内容要旨
肺癌が原因で緊急対応を要する病態として,喀血,気道狭窄,大量の胸水・心嚢液貯留,上大静脈症候群,脳転移による頭蓋内圧亢進,椎骨転移による脊髄圧迫などが挙げられる.これらはすべて生命を脅かす病態ではあるが,その対応は,当該病態の重症度や,原疾患となる肺癌の進展度に応じ,症例個々に検討されるべきである.大量喀血に対しては救急処置としての窒息回避,気道確保が必要となるが,腫瘍が肺動脈に穿破した場合,救命は困難である.気管支動脈からの出血が考えられる場合,Seldinger法による気管支動脈塞栓術が奏効する場合がある.腫瘍による中枢気道の狭窄に対しては内視鏡的気道開大が試みられる.軟性鏡,硬性鏡それぞれ利点,欠点があるが,最も標準的なDumon stentを留置する場合は後者が用いられる.胸水・心嚢液の大量貯留による重篤な呼吸循環障害に対しては早急に排液を行う必要がある.再貯留を予防するために癒着術が有効である.脳転移による重篤な意識障害は頭蓋内圧亢進でおこり,脳ヘルニアによる死亡を回避する処置としての内・外減圧術が有用である.椎骨転移による圧迫が脊髄麻痺を招来する場合,非可逆的な神経変性がおこる前に救急処置としての椎弓切除を行って麻痺を回避できることがある.患者の一般状態,肺癌自体の余命,骨転移の程度などを勘案して手術適応が決められる.

キーワード
肺癌, 喀血, 気道狭窄, 胸水, 上大静脈症候群, 脳転移


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