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日外会誌. 105(2): 228-232, 2004


特集

外科領域における栄養管理

6.病態別栄養管理法の実際
c.化学療法施行時

金沢大学医学部附属病院 外科

大村 健二

I.内容要旨
進行・再発消化器癌症例には,原病が引き起こす病態や手術による臓器欠落に起因する様々な栄養障害が存在する.しかし,化学療法施行時にルーチンに行う静脈栄養は不利益な合併症を引き起こすのみである.したがって,消化器悪性腫瘍がもたらす病態および化学療法の消化管毒性を念頭においた必要にして十分,かつ適切な経路での栄養療法が要求される.消化器癌症例では,様々な要因で葉酸欠乏およびVitB12欠乏をきたしやすい.VitB12欠乏で認められる神経症状は,葉酸の投与で悪化,難治化する.還元型葉酸製剤と5-FUを併用する化学療法を施行する際には十分な注意が必要である.化学療法を行う進行・再発消化器癌症例に栄養療法を施行する適応は,非癌症例に栄養療法を施行する場合と同様である.低栄養に加えて種々の代謝障害が存在する消化器癌症例では,栄養の過負荷回避を意図して開始時の栄養投与量および栄養組成を決定する.栄養投与経路と栄養の形状では,経口的な普通食摂取を基本とする.化学療法施行時の静脈路確保を目的とした中心静脈カテーテル留置は慎む.消化管の通過障害によって流動物の摂取も困難な症例には,通過障害部位を越えての栄養チューブ留置やPEGを施行する.これらが施行できない場合は,TPNを用いた栄養療法を選択する.小腸以下の消化管に通過障害がある場合は,その解除によって経口摂取がどの程度期待できるかを慎重に検討すべきである.

キーワード
栄養療法, 化学療法, 有害事象


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