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日外会誌. 104(12): 835-839, 2003


特集

外科的侵襲に対する生体反応:最新の知見

6.出血性ショックと虚血再環流の病態と最新の治療

東北大学大学院 医学系研究科救急医学分野

篠澤 洋太郎 , 小池 薫

I.内容要旨
虚血におちいった細胞では虚血中にhypoxanthine,xanthine oxidaseが増加,再び酸素が供給されるとこれらが触媒となり活性酸素が産生される.活性酸素はそれ自体が細胞障害性を有するが,同時に炎症性細胞の転写因子を活性化して細胞特異な炎症性タンパクの合成を誘導し,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS),多臓器不全(multiple organ dysfunction syndrome:MODS)発症の引き金となる.全身性の虚血である出血性ショックではショック時に非環流を余儀なくされる腸管は,粘膜微小循環内に存在する血管内皮細胞の表面積は大きく,免疫細胞の密度も高いため,再環流による炎症性メディエーターの合成,血管内皮細胞および免疫細胞における接着分子ならびに組織因子の発現が他部位に比し多く誘導され,MODS発症に関与している可能性が高い.腸管の虚血再環流の発生そのものを予防する方法はないので,ショック時に腸管の血行動態の安定に有効と考えられる血管作動薬を使用して腸管への酸素供給量を増加させ虚血を軽減すること,早期に経腸栄養を開始することが,現段階では唯一の腸管再環流後の遠隔臓器障害を軽減させる治療法であるが,腸管の虚血再環流にともなう病態生理学的連鎖を断ち切る,臨床的にも有用な新たな治療法の開発が期待される.

キーワード
活性酸素, 酸素, 炎症性メディエイタ, 小腸, 臓器障害


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