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日外会誌. 104(10): 721-729, 2003


特集

原発巣からみた転移性肝癌に対する治療方針

7.大腸癌 外科治療

東京大学大学院 医学系研究科肝胆膵外科学・人工臓器移植外科学

皆川 正己 , 幕内 雅敏

I.内容要旨
大腸直腸癌よりの肝転移に対して切除を第一選択とすることに異論は無い.しかし,高度進行例や再発例に対する手術適応に関しては一定の合意は無い.1980年~2001年に304名の大腸直腸癌肝転移患者に対して393回の根治的肝切除が行われ1,142個の転移結節が切除された.この患者の長期予後及び予後因子を解析した.生存率は3年;51%,5年;36%,10年26%,20年25%であった.性別,年齢,原発巣の部位,転移腫瘍径,切除術式,切除断端の距離は有意な予後因了ではなかった.単発症例の5年生存率が46%に対して多発では28%と不良であったが,多発を2~3個,4個以上に分けると,両者に生存率の差は無かった.また多発症例を片葉と両葉に分けて比較すると生存率に差は無かった(P=0.61).肝切前CEA値が高い症例(P=0.0008),原発巣のDukes’C(P=0.0002),原発巣と肝の手術間隔が6カ月未満(P=0.00053)は有意に予後不良であった.肝外転移(P=0.15),肝外浸潤(P=0.16),血管浸潤(P=0.99),胆管浸潤(P=0.48),はいずれも統計上は有意では無かったが,肝門部リンパ節転移のある症例はたとえ根治的に切除しても最長生存期間は1年4カ月にすぎなかった.
4個以上の多発両葉転移や肝外転移,浸潤を伴う症例に対しても積極的に切除することにより予後は改善される.しかし肝門部リンパ節転移を伴う症例は手術の適応外である.また多発転移症例は残肝再発を高率に来すが,この場合は積極的に再切除を行うことにより予後は改善される.

キーワード
転移性肝癌, 肝切除, 大腸直腸癌, 予後因子

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