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日外会誌. 104(10): 707-710, 2003


特集

原発巣からみた転移性肝癌に対する治療方針

4.乳癌

東北大学 医学部腫瘍外科

石田 孝宣 , 大貫 幸二 , 武田 元博 , 鈴木 昭彦 , 大内 憲明

I.内容要旨
鎖骨上・傍胸骨リンパ節を含む遠隔臓器への転移は全初発乳癌症例の約23%に認められる.そのなかで初発転移臓器としての肝臓の頻度は骨や肺・胸膜に比べると低く約8%にとどまるが,他臓器の転移病巣が治療抵抗性になるにつれて高頻度に肝臓にも転移を来たしてくる.肝臓に転移が明らかとなった症例の予後は不良で,3年および5年生存率はそれぞれ22%,11%と,肺・胸膜など他の臓器転移に比べて明らかに低い.
治療は化学・内分泌療法による全身のコントロールを基本とする.化学療法では,アントラサイクリン系薬剤を第一選択,タキサン系薬剤を第二選択としているが,ハーセプテスト陽性症例に対しては,ハーセプチンの使用が選択肢に入る,内分泌療法は,ホルモン感受性が認められた症例が対象で,閉経前の若年者には,LH-RH agonistまたは腹腔鏡下の卵巣摘出術を中心に,閉経後の症例には抗エストロゲン剤あるいはアロマターゼ・インヒビターを中心に用いている.しかし,現在の化学・内分泌療法ではCRが得られる可能性は数%にとどまり,一時的なPRは得られても,結局救命できないことが多い.
現状では,肝臓に転移を来たした症例の治療成績は不良であるため,マンモグラフィを併用した検診の普及による早期発見,および術前,術後の補助療法による肝転移の防止に重きを置く必要がある.

キーワード
乳癌, 肝転移, 化学内分泌療法

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