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日外会誌. 104(8): 562-566, 2003


特集

外科領域におけるステント療法

7.末梢血管

東京大学大学院 血管外科

重松 宏

I.内容要旨
高齢化社会の到来や生活習慣の欧米化に伴い,慢性閉塞性動脈疾患の中で閉塞性動脈硬化症が大多数を占めるようになり,血管内治療は閉塞性病変に対してfirst choiceとして行われる治療手技として確固たる地位を占めるようになってきた.経皮的血管形成術は重症虚血肢に対する治療アルゴリズムの中では,最初に選択すべき治療手技として位置づけられており,外科的血行再建と併せて使用され,侵襲の軽減がはかられている.一般に病変長が3~5cm未満の限局性狭窄性病変が血管内治療のもっとも良い適応で,完全閉塞病変や狭窄範囲の長いものでは開存率は低下する.腸骨動脈がもっとも良い治療対象部位で,大腿動脈より末梢になるほど成績は不良となる.PTAによる血流改善の指標としてはABIの0.1以上の上昇が必要で,臨床症状や足部虚血性病変の改善とABIの推移を組み合わせて,治療成果を評価する基準が提唱されている.金属ステントの留置適応基準は,PTA後の再狭窄例, PTAにより動脈解離が認められた例,PTA後に残存圧較差が10mmHg以上認められる例,治療対象範囲が広範である例,石灰化の強い例などであるが,腸骨動脈領域ではステント留置の有用性が高いと考えられ,血管内超音波検査を併用したprimary stentingによる良好な成績が報告されてきている.遠隔期の再狭窄には平滑筋細胞の増殖やマクロファージの浸潤などが関与しており,放射線照射を行ったり,taxolやrapamycinなどの平滑筋細胞増殖を抑制する抗炎症性薬剤を添加したステントの導入が試みられている.我が国では内頸動脈狭窄性病変も増加する傾向にあるが,血栓内膜摘除術との比較検討ではPTAの成績は劣っており,PTA中の末梢側塞栓を防止するprotecting deviceの開発・普及が必要で,現時点では内頸動脈分岐部が高位のものや再狭窄例,放射線照射後のものなどが血管内治療を検討する対象となろう.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 血管内治療, 経皮的血管形成術, ステント, 内頸動脈狭窄

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