[書誌情報] [全文PDF] (705KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 104(7): 511-517, 2003


特集

感染症と分子生物学

5.重症感染症の病態とメディエーター

千葉大学大学院 医学研究院救急集中治療医学

織田 成人 , 平澤 博之 , 志賀 英敏 , 松田 兼一 , 上野 博一 , 仲村 将高 , 渡邉 栄三

I.内容要旨
重症感染症に続発する敗血症性ショックや臓器障害の発症に,体内で産生される種々のメディエーターが関与していることが明らかにされている.なかでもTNF-αやIL-1βをはじめとする炎症性サイトカインは,臓器障害発症のキーメディエーターとして,中心的な役割を演じていることが広く認められている.サイトカインの活性化を臨床でリアルタイムに知ることができれば,病態の把握に有用であるばかりでなく,臓器障害発症予防のための抗サイトカイン療法などの各種治療を適切なタイミングで施行できるようになると考えられる.最近我々は,化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法を用いて30分程度で測定可能なIL-6血中濃度迅速測定システムを導入し,その臨床上の有用性について検討してきた.IL-6血中濃度はサイトカインの活性化をよく反映し,また重症度評価法としても有用であった.さらに動脈血中および肺動脈血中IL-6濃度を同時に測定し,その比(A/PA)を検討することで,サイトカイン産生部位を推測できることが判明した.一方,PMMA膜ヘモフィルターを用いた持続的血液濾過透析(PMMA-CHDF)は,高サイトカイン血症対策として重症敗血症,敗血症性ショックの治療に有用であり,敗血症性ショックに対してPMMA-CHDFを早期に施行することにより,ショック離脱率,転帰の改善が認められた.また,IL-6異常高値を示した症例でサイトカイン関連遺伝子の特定のgenotypeが高頻度に認められることが判明した.サイトカイン関連遺伝子の解析によって高サイトカイン血症のハイリスク症例を予め認識しておくことで,より的確な治療を行うことが可能となり,症例に応じたオーダーメイド医療が可能となると考えられた.

キーワード
敗血症性多臓器不全, メディエーター, サイトカイン, インターロイキン-6(IL-6), 遺伝子多型

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。