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日外会誌. 104(7): 506-510, 2003


特集

感染症と分子生物学

4.好中球,マクロファージと外科感染症

防衛医科大学校 防衛医学研究センター外傷研究部門

深柄 和彦 , 平出 星夫

I.内容要旨
好中球とマクロファージは,細菌感染に対する生体防御のfirst lineを形成する貧食細胞である.感染部位では,マクロファージによってケモアトラクタントが産生され,補体の活性化によって生じたC5aとともに好中球の局所への集積を高める.マクロファージの産生するIL-1やTNFαなどの炎症性サイトカインは,感染局所の血管内皮上の接着分子,P, E-selectin, ICAM-1の発現を高める.これら接着分子によって好中球一血管内皮相互作用が生じると,好中球は活性化し血管内皮細胞間をすりぬけ間質へ遊走,滲出する.感染初期には,好中球が滲出白血球の主体をなし,単球の滲出は遅れて増加する.これら貧食細胞は,酸素依存性あるいは酸素非依存性に殺菌をおこなう.好中球は,感染局所でアポトーシスあるいはネクローシスの形で死に至るが,アポトーシスを起こした好中球はマクロファージに貧食されるため炎症が消退する一方,ネクローシスにおちいった好中球は炎症性メディエーターの周囲への放出によって炎症の増強,遷延を引き起こす.
好中球,マクロファージの機能は,低栄養や経腸栄養の欠如によって低下するため,周術期の適切な栄養管理が外科感染症の予防に必須である.また,術前から接着が亢進するものの遊走・滲出に至らないstickyな好中球を有する患者群では術後感染症発生の増加をみた.敗血症患者では,β2-integrin-ICAM-1以外にα4-integrin-VCAM-1のpathwayによる好中球の血管内皮への接着増加が報告されている.これら好中球一血管内皮相互作用の異常が,感染症発生と臓器障害に関与していると推察される.

キーワード
サイトカイン, 接着分子, アポトーシス, 低栄養, 臓器障害

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