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日外会誌. 104(7): 494-498, 2003


特集

感染症と分子生物学

2.感染に対する生体防御機構:Toll-like receptorと自然免疫

広島大学大学院 病態制御医科学講座外科

竹末 芳生 , 大毛 宏喜 , 香山 茂平 , 今村 祐司 , 村上 義昭 , 末田 泰二郎

I.内容要旨
自然免疫は,病原体に対する最前線の防御機構であり,リンパ球が関与する獲得免疫系が作動するまでの初期の迅速な対応として重要である.近年におけるToll-like receptor(TLR)の発見は,自然免疫を分子レベルで理解する上で大きな進歩といえる.TLRは自然免疫において微生物による感染を認識する機構であり,樹状細胞やマクロファージで細胞表面に発現されている.グラム陰性菌のリポポリサッカライドやグラム陽性菌のペプチドグリカン,細菌DNAなどの病原体関連分子パターン(PAMP)がTLRと反応することにより,シグナル伝達が起こり炎症性サイトカインや抗菌ペプチド産生が誘導される.
また自然免疫系は,獲得免疫系の誘導もコントロールしている.TLRシグナルはナイーブT細胞のTh1への分化を誘導することが推察されているが,Th2への分化はどうも他の自然免疫における認識システムが関与しているらしい.以上の如くTLRの宿主防御機構での役割として①微生物認識,②抗菌活性の誘導,③獲得免疫システムのコントロールがあげられ,それらについて述べた.

キーワード
Toll-like receptor, 自然免疫, 生体防御機構, 感染, 樹状細胞


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