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日外会誌. 104(5): 395-398, 2003


特集

癌外科治療の標準化に向けての展望

5.胃癌

東京大学 消化管外科学

上西 紀夫

I.内容要旨
日本胃癌学会が公表した「胃癌治療ガイドライン」とその解説書は,胃癌の外科治療の標準化に向けて大きなインパクトを与え,他の領域における治療ガイドライン作りの先駆けとなっている.「治療の標準化」を考える場合,治療法の適応・選択,治療を支える技術,そして治療成績の評価の3つの面での標準化が必要となる.この点から検討すると,「胃癌治療ガイドライン」は治療法の適応と選択の標準化が中心となっているが,治療技術や治療成績の評価については言及していない.とくに「医療水準」と言うと,選択した治療法が適切に行われる技術も問われることになり,その「技術水準」の保証が問題となる.
これまでは「技術水準」に関しては,いわば徒弟制度的な方法にて手術手技の修練が行われており,当然のことながら症例の多い施設の技術の方が安定している.従って「標準化」を考えた場合,全国的な規模での研修システムの構築が今後の課題となる.とくに,腹腔鏡(補助)下による胃癌の手術は今後普及することが予想されるが,その技術修練については,一部で私的な施設での研修が行われているが,ほとんどの場合はこれまでと同様に個々のプログラムで行われている.さらにそれらの技術評価については,標準化され確立したものはない.統一されたシミュレーション・システムなどを用いた修練と技術評価を,学会や公的機関が主導となって行うのも一つの有力な方法であろう.
標準的な治療成績の評価法としては,生存率による評価が一般的である.しかしながら,治療成績の向上と早期胃癌症例の増加により,術後のQOLの向上が大きな目標となって来ており,その点における評価は一定でない.さらに,術後の症状と密接に関連する残胃や再建に用いた小腸の機能評価については,いくつかの新しい方法が試みられているが,その評価法については確立されていない.今後は,これらの3つの面からの評価に基づいた胃癌外科治療の標準化と,さらなる治療成績の向上が課題である.

キーワード
胃癌, ガイドライン, 標準化, 技術水準, QOL

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