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日外会誌. 103(12): 869-872, 2002


特集

術後感染症対策の最近の進歩と問題点

6.肝臓外科における胆道感染

名古屋大学大学院 器官調節外科学

新井 利幸 , 梛野 正人 , 二村 雄次

I.内容要旨
閉塞性黄疸を合併した胆道癌に対する肝切除後には,肝細胞癌や転移性肝癌に対する肝切除に比べて,菌血症に代表される感染性合併症が高率に発症する.その起炎菌の多くが術前の胆汁中細菌に一致することから,閉塞性黄疸に伴う胆道感染が術後合併症に強く関与している可能性がある.胆管閉塞に伴う胆道感染や,PTBD施行後の胆道感染の増加のメカニズムは不明である.しかし,閉塞性黄疸による腸管内胆汁の欠如は,腸内細菌叢の変化や腸粘膜のintegrityの低下をもたらす.これがbacterial translocationによる経門脈性の胆道感染に少なからず関与している可能性がある.また.閉塞性黄疸によるKupffer細胞の機能低下や肝細胞のtight junctionの異常が肝切除後の菌血症に関与していることが推定されている.肝切除後の肝不全は一旦発症すると治療が困難である.その発症には感染性合併症が深く関与し,逆に肝不全が重篤な感染を引き起こすという悪性サイクルを形成するので,術前の肝予備能の十分な回復と感染症対策が必要である.

キーワード
閉塞性黄疸, 胆汁細菌, 感染性合併症, 菌血症, 肝不全

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