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日外会誌. 103(12): 851-855, 2002


特集

術後感染症対策の最近の進歩と問題点

2.心臓手術後合併症としての人工弁感染

東京大学 医学部心臓外科

本村 昇 , 高本 眞一

I.内容要旨
弁置換術後の人工弁感染の発生頻度は1%未満とまれであるが手術死亡率は20%前後と合併症としては極めて重篤である.典型的症状としては発熱・新たな心雑音・Osler結節・Roth斑・Janeway病変などがあるが,血液培養陽性をもって確診を得ることができる.感染性心内膜炎の診断基準としてはDuke基準が提唱されており,人工弁感染もこれに準ずるのがよいとされている.臨床的には弁置換術からの発症時期により早期型(約60日以内)と後期型(主に1年以降)に分けられる.早期型は手術中汚染や院内感染が原因といわれており,起炎菌はStaphylococcusであることが多い.後期型は基本的にはNative valve endocaditisと同じ機序で発生するとされ,Streptococcusが多い.治療はまず起炎菌を突き止め感受性のある抗生剤を6週間以上投与する.外科的治療の適応は,内科的治療に反応しない心不全と敗血症の二つである.起炎菌がStaphylococcus aureusの場合には相対的適応といえる.人工弁感染に対する代用弁選択としては,入手可能であれば凍結保存同種弁が第一選択となる.ヴァイアビィリティを有する点,抗生剤処理が施されている点,compliancemismatchが少ない点などが人工弁感染に優れている理由と考えられている.最近では,抗生剤を染みこませた機械弁やStentless valveなども試みられている.人工弁感染は手術戦略も確立されておらずまたその成績も満足できるものとはいえない.同種弁使用に関する環境整備や,人工臓器的,再生医療的アプローチを展開する必要性が今後とも重要となるであろう.

キーワード
人工弁感染, 感染性心内膜炎, 弁置換, 同種弁, 合併症

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