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日外会誌. 103(11): 821-824, 2002


特集

乳癌手術の現況とその根拠

8.乳房切除術の適応

東京都立駒込病院 乳腺外科

中西 史 , 戸井 雅和 , 佐治 重衡 , 坂東 裕子

I.内容要旨
現在,乳癌の治療法は大きく変わりつつある.手術術式でも温存手術の普及・適応拡大,術前化学療法の導入に伴い,乳房切除術はその適応が限られたものになりつつある.2000年の全国集計1)でも全乳癌手術中胸筋温存乳房切除術は52.2%であり,年々減少してきている.しかし,原発巣が非常に大きく温存不可能な症例や術前化学療法に全く反応しない症例もなくなることはなく,このような症例は今後も乳房切除術の適応となると思われる.
当科での乳房切除術はAuchinncloss法を標準術式としており,広範な大胸筋または胸壁浸潤を認める症例や,著明なリンパ節転移を認める症例,術中Rotterリンパ節転移陽性例ではHalsted法の適応としている.また,広範に乳管内進展が疑われる非浸潤癌や温存術後の断端陽性例,温存術後の局所再発例,センチネルリンパ節で腋窩転移陰性と判明している症例やセンチネルリンパ節生検との併用例で単純乳房切除術を施行している.
温存手術や術前化学療法の普及にともない乳房切除術はその適応はさらに縮小すると考えられるが,その適応を見誤ることなく,十分なインフォームドコンセントのもとに術式を決定していくことが重要である.

キーワード
乳房切除術, 単純乳房切除術, 胸筋温存乳房切除術, 胸筋合併乳房切除術

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