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日外会誌. 103(11): 799-802, 2002


特集

乳癌手術の現況とその根拠

3.治療効果予測因子に基づく術式選択

1) 慶應義塾大学 医学部外科学教室
2) 慶応がんセンター 

池田 正1) , 神野 浩光1) , 松井 哲2) , 三井 洋子1) , 麻賀 創太1) , 武藤 剛1) , 和田 真弘1) , 北島 政樹1)

I.内容要旨
効果予測因子とは,薬剤が,腫瘍あるいは宿主におよぼす効果を予測する因子であり,一般的には腫瘍の薬剤に対する感受性を予測する因子とされている.一般的に抗癌剤の効果は限定的であるにもかかわらず,副作用が強いことから,効果的に使用するには効果予測因子により効果がありそうな群を選び出して使用することが,効率的である.一方,乳癌そのものに対する考え方が,ハルステッドの時代からフィッシャーの時代に代わり,乳癌は全身病であるとの考え方が広く受け入れられている.そこで,いままでは集学的治療において照射や手術の局所療法同士は相互に影響し合うが,局所療法と化学療法やホルモン療法の全身治療とは独立して考えるべきものとされていた.しかし,術前化学療法が普及してくるにつれて,この辺の考え方を少し変えなくてはいけないのかもしれないという機運がある.
温存手術において問題となるのは局所再発であり,局所再発の高リスク因子は断端陽性ことに乳管内進展である,浸潤部と非浸潤部とでは薬剤あるいは照射に対する感受性が異なり,一般的に非浸潤部のほうが治療抵抗性である.浸潤部と非浸潤部とでは非浸潤部においてHer-2/neuの発現率が高いことが報告されている.このようなbiologicalな違いが治療抵抗性に関与していることが考えられる.今後乳管内癌に対する効果予測因子の重要性が術式との関係で増すものと考えられる.逆に,腋窩リンパ節転移が多そうな症例で,種々の効果予測因子が陽性の症例は,必ずしも局所治療を拡大することなく,全身治療を効果的に組み合わせられるようになるであろう.

キーワード
乳癌, 効果予測因子, 術前化学療法, 術式

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