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日外会誌. 103(11): 789-793, 2002


特集

乳癌手術の現況とその根拠

1.特集によせて

東海大学 医学部外科

田島 知郎

I.内容要旨
この特集ではわが国における乳癌手術療法の現状を取り上げ,術式選択の根拠についての論説もそれぞれで展開されるので,導入部分を担当するこの「特集によせて」では,議論の焦点や,背景にある問題を考えるための材料を提供できるようにと意図した.乳癌手術は,乳腺部分とリンパ節領域のそれぞれに対する手技から構成されるが,この両方の部分について未完成と判断せざるを得ないところがあり,その根拠についても糺しておくべきところが多く,また海外からのevidenceをわが国にどう適用するかの問題もある.乳房温存術式については,手術内容が術者によって異なり,その施行頻度は施設によって20~85%と開きが大きい.リンパ節に関しては,中心的な話題のセンチネルリンパ節生検では,用いるトレーサー,注入部位などの基本的なところでも必ずしも合意がなく,下位腋窩リンパ節サンプリング/郭清,あるいはリンパ節4個生検などとの長期成績による比較検討も必要である.乳癌手術では,局所/領域での腫瘍コントロールについて最善の努力を払う必要があり(Fisher 1999),外科医は広い視野から全体像を把握しつつ,手術野/手術手順のあらゆる詳細に注意を払い,手術的アプローチを状況に応じた最適化したものに高めたい.乳癌手術を良好な局所コントロール,ひいては良好な長期治療成績に結びつくものへと熟成化させるには,外科医側の努力し工夫する姿勢に衰えがあってはならない.海外からの情報に流されるだけでなく,わが国でこそ乳癌治療を深めるべきで,また乳癌治療をモデルにして,世界から患者を呼び込めるレベルへと日本の医療を進化させるべきである.またこのリーダー役を担うのは外科医以外にないという立場から,わが国の医療全体像を冷静に分析し評価してみる必要もあろう.

キーワード
乳房温存手術, センチネルリンパ節生検, 癌局所コントロール, 全身病

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