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日外会誌. 103(10): 713-716, 2002


特集

鏡視下手術の現況と問題点-適応と限界-

3.内視鏡併用乳腺手術の現況と展望

東海大学 医学部外科

田島 知郎

I.内容要旨
鏡視下手術の乳腺疾患への応用の普及には遅れがあるが,これは乳腺手術には体腔壁貫通性の手術創を作成するステップがなく,また送気で一挙に視野が広がるというわけでもないことが主因である.しかしながら内視鏡併用乳腺手術では,腋窩近傍切開と必要に応じての乳輪周囲切開によって,比較的早期の乳癌に対する乳腺切除(全摘/部分切除),腋窩リンパ節郭清,ならびに再建が,整容性の向上ばかりでなく,侵襲の軽減にも役立つ形で施行可能で,従来の方法の安全な代替法になることが示されている.当初は剥離部分が多いので,侵襲が増し,時間が長く,また出血が多くなる傾向があるが,習熟すれば問題の多くは解決し,腋窩郭清や再建組織採取にはとりわけ有用である.乳癌一般の手術に適用するには,局所コントロールに関する長期成績の確認が求められるが,鏡視下手術を競合するものとしてでなく,根治性と整容性の両方を追求する有効な技法として併用することで,乳癌手術のあり方を改善する方向にもつながる.手術術式がempowerment modelによるinformed choiceに基づいて選択される時代に向かっている現在,鏡視下手術を乳腺手術に併用しないという姿勢に固執し続けられるのは,そう長くはなさそうだ.

キーワード
乳癌, 乳房温存手術, リンパ節郭清, 根治性, 整容性

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