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日外会誌. 103(9): 623-626, 2002


特集

難治性心不全に対する外科的アプロ一チ-最近の進歩-

12.心臓移植

大阪大学大学院 医学系研究科臓器制御外科

福嶌 教偉 , 松田 暉

I.内容要旨
我が国でも1999年2月にようやく脳死臓器移植が実施され,以後3年あまりの間に19例の臓器提供があり,計心臓13例,肺10例,肝臓17例,腎臓29例,膵腎同時6例,膵単独移植1例,小腸1例の計77例の臓器移植が成功裏に施行された.
平成14年4月1日現在までに116例が心臓移植希望者として登録され,13例が心臓移植を受けたが,8例は海外で心臓移植を受け,32例が死亡している.待機中に半数以上の症例が補助人工心臓を装着し,心臓移植施行13例中10例がブリッジ症例(Novacor型2例,TCI-IP型1例,国循型7例)であり,我が国における補助人工心臓の役割は大きく,予後・QOLの面から埋込型補助人工心臓の早期認可が期待される.移植13例全例生存中で,海外の成績(国際心肺移植学会データ:1年生存率83%)に比しても遜色なく,治療を要する拒絶反応を認めたのは2例で,有効に治療できている.治療を要する感染症として肺炎2例,サイトメガロウイルス胃炎1例を認めたが,抗菌剤の使用等で治癒できた.13例中,11例が外来通院中で,7例が社会復帰している.
最近のトピックスとして,新しい免疫抑制療法,異種心臓移植の研究,前感作抗体陽性者の心臓移植,bridge to recoveryについて概説した.
我が国のドナー不足は極めて深刻であり,意思表示カードの普及,臓器提供施設の拡大等社会的な働きかけが必要と考えられるが,同時にドナープールを拡大する方法として,non-heart-beating donorからの心移植,異種心移植の臨床応用が期待されている.また原疾患対する遺伝子治療,再生医療の開発が期待される.

キーワード
心臓移植, 異種心臓移植, ミコフェノール酸モフェティル, 前感作抗体, bridge to recovery

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