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日外会誌. 103(9): 597-602, 2002


特集

難治性心不全に対する外科的アプロ一チ-最近の進歩-

7.補助人工心臓

埼玉医科大学 心臓血管・呼吸器外科

許 俊鋭 , 西村 元延 , 朝野 晴彦

I.内容要旨
人工心臓には完全置換型人工心臓(TAH = total artificial heart)と補助人工心臓(VAS = ventricular assist system)とがあり,開心術後心不全症例の一時的補助や心臓移植へのブリッジとして使用されてきた.心臓移植適応症例が末期的心不全に陥った場合に確実な循環維持効果が証明されている治療はVASやTAHによる補助循環治療のみである.本邦における13例の心臓移植の内10例(77%)が補助人工心臓ブリッジ症例であり,今日心臓移植治療にとって「補助人工心臓のブリッジ使用」は必要不可欠な付随的治療手段となっている.VASには体外設置式VASと体内設置式VASがあり,Novacor LVASやHeartMate LVASなどの体内設置式VASは左心補助装置であるのに対して,東洋紡VAS,ゼオンVASやThoratec VASなどの体外設置式VASは左心補助(LVAS)のみならず右心補助(RVAS),両心補助(BVAS)が行える.また, VAS装置の進歩と共にVAS補助中の患者管理技術も向上し,患者のQOLの向上と医療費削減を目的とした自宅復帰プログラムも推進されてきた.欧米においては最近VASの心臓移植へのブリッジ使用のみではなく,自己心の回復を目的としたVAS使用(Bridge to Recovery)や心臓移植非適応症例に対する延命を目的としたVAS使用(Semi-permanent Use)の試みも報告され,内科治療に対する生存率ならびにQOLにおけるVAS治療の有効性が証明されてきた.更に,低コストの遠心ポンプや軸流ポンプを用いた体内設置型VASの臨床試験も開始され,全てのシステムを体内に埋め込むアロウ社製VAS(Lion Heart)の臨床も始まり,21世紀は人工心臓にとっても新しい時代の幕開けとなった.

キーワード
補助人工心臓, LVAS, RVAS, BVAS, 心臓移植


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