[書誌情報] [全文PDF] (3274KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 103(9): 578-582, 2002


特集

難治性心不全に対する外科的アプロ一チ-最近の進歩-

3.左室部分切除術:Partial Left Ventriculectomy

東海大学 医学部外科

川口 章

I.内容要旨
心不全に対する心移植以外の治療法が求められてきた.左室部分切除術(PLV)はそうした心不全治療法の1つであり,移植適応のないもののみならず,移植の適応患者にも行われてきた.「心拡大があれば有効」という当初の予想に反して,1年無事故生存率は心移植に比べて低い.これは心移植適応患者が病院外で生活できている割合,すなわち心移植の必要数を減少させた成果ともいえる.PLVの効果のなかった症例を心移植で救命すれば成績はさらに向上するため,心移植ができる体制で実施するほうが互いに補完し合理的であり安全でもある.心移植が出来ない症例や環境においては,効果のありそうな症例,すなわち心機能が保たれていて全身状態がよい症例に待機的に実施するべきである.心縮小はPLVだけでなく,布で包む,糸で引っ張る,クリップで潰すなどの低侵襲的な方法でも可能になりつつある.これらの方法は,いずれもPLV同じ理論に立脚し,収縮機能は改善するが拡張機能は制限されるという共通の問題を抱えている.しかし,低侵襲であるため,より早期により多くの症例に実施でき,より大きな効果が期待できる.PLVが示した理論と可能性を受け継ぎ,低侵襲で安全で有効な方法の開発と早急な実施が期待される.

キーワード
左室拡大(心拡大), 心不全, 移植, 心縮小手術, 左室部分切除術


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。