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日外会誌. 103(9): 574-577, 2002


特集

難治性心不全に対する外科的アプロ一チ-最近の進歩-

2.Dor手術

葉山ハートセンター 心臓血管外科

磯村 正

I.内容要旨
虚血性心疾患にたいする冠動脈バイパス術(CABG)は成績が安定し,その長期予後も期待できるようになってきた.しかしながら,低左心機能例にCABGのみを施行後の長期予後は必ずしも良好でないことも多く,Dorらの提唱する左室縮小形成術を加えることにより予後の改善が期待できる.本稿ではこれまでの報告を中心に,著者の経験を加え,その治療法成績について述べる.
手術適応は左心室瘤及び左室の高度拡大を伴う虚血性心筋症で手術は体外循環下に左室を心尖部から左前下行枝左側に沿い,心基部に向い切開し,心室中隔の健常部と非健常部をパッチにより境する。心拍動下に行うことにより,左室の心筋の性状を触診でわかり,境界部が正確に決定できる.
Dorらの虚血性心筋症(ICM)49例での成績では手術死亡10%,左室駆出率(EF)は術前の23±6%から術後38±11%へ,左室拡張末期容量指数は248±79ml/m2から107±47ml/m2へ改善し,さらに術後8年生存率でみると,59例のakinesis群13例死亡,49例の広汎dyskinesis群6例死亡で統計学的には有意差をみとめないとした.著者の経験でのICMは81例で,僧帽弁形成あるいは弁置換術を32例に行い,難治性不整脈にたいする冷凍凝固を7例に併施した.病院死亡は10例(6例が緊急手術)で,最長5年の中期には17例が死亡(うち心臓死14例)し,53例はNYHA1-2度に改善した.左室駆出率は術前の24±6%から術後36±8%へ,左室拡張末期容量指数は153±42ml/m2から103±35ml/m2へ改善した.心不全を主とする虚血性心筋症は心筋虚血後の左室リモデリングによる結果として生じ,心不全,致死的不整脈の改善が予後を左右する.Dorらの提唱する左室形成術手術後に,厳重な内科的な管理を継続することにより,長期予後の改善が期待できると考えられる.

キーワード
Dor手術(EVCPP), 虚血性心筋症, 左室形成術, 冠動脈バイパス手術(CABG), 僧帽弁閉鎖不全

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