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日外会誌. 103(6): 463-467, 2002


特集

癌の分子診断学-ここまで進んだ診断・治療への応用-

3.胃癌

広島大学大学院 医歯薬学総合研究科分子病理学

安井 弥 , 大上 直秀 , 倉岡 和矢 , 中山 宏文

I.内容要旨
病理検体に対する分子病理診断システムは,良悪の鑑別診断および真の前癌性病変の抽出,癌の悪性度診断,多発癌の推定について,多大な貢献をしてきた.より精度の高い分子診断を行うためには,更に詳細な癌の分子病態を把握し診断に導入する必要がある.ピストンのアセチル化は,種々の遺伝子発現制御を介して胃癌の発生・進展に関わっており,新しい胃癌の分子マーカーと期待される.胃癌特異的新規遺伝子の同定には,SAGE法による網羅的遺伝子発現解析が有力な手段であり,Reg IVをはじめとする様々な候補遺伝子が見い出された.さらに,E-cadherinやMMP-1の遺伝子多型と胃癌の発生・進展との間に相関性が認められている.これらの知見と新しい手法を導入した分子診断は,それぞれの癌および個人の遺伝子・分子の個性に基づいた個別化医療ならびに予防に直結するものである.重要なことは,それと平行して,胃癌の分子病態解明の努力を続けることであり,分子病理学的に様々な異常の胃癌における普遍性の検証を行うことである.

キーワード
胃癌, 分子病理診断, SAGE, SNP

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