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日外会誌. 103(5): 435-440, 2002


特集

生体肝移植の現況と展開

5.術後合併症とその対策
2)血管合併症, 胆管合併症

新潟大学大学院 医歯学総合研究科消化器一般外科

佐藤 好信 , 畠山 勝義

I.内容要旨
生体肝移植手術は脳死肝移植に比べて困難な点が多く,再移植が困難であるということから,血管合併症や胆管合併症に対する予防と対処の両方の工夫が必要である.これら合併症の対処法として近年,interventional radiology(IVR)の有用性が増えている.三つの脈管系の合併症についてはまずその予防から考えることが第一で,肝静脈合併症については,肝静脈の形成も考慮し吻合口径を十分確保できるような吻合をするよう心懸けるべきである.門脈吻合も同様に,術前後の門脈血栓や狭窄にたいし,グラフト使用も含めて吻合法の工夫をまず考えることである.肝動脈再建は,特にgraft lossの第一の原因となるため,動脈吻合経験の豊富な医師によってなされるべきであるが,われわれの経験からは成人生体肝移植においては,経験のある外科医によればルーペによる再建で十分であると思われる.生体肝移植における胆道再建は,胆管空腸(HJ)吻合,胆管一胆管(DD)吻合のどちらを選択すべきか,ステントをどうするかが問題になってくる.吻合法についてはD-D吻合がまだ歴史が浅く,今後の経過観察が必要であるが,乳頭機能の温存,合併症が起きた際の対処のしやすさ,手術の単純さ,上行性胆管炎の予防からいって優っていると思われる.またD-D吻合では血行の問題から胆管狭窄が増加する可能性があり,H-J吻合では上行性胆管炎が起きたときの対処が困難なことが多いことを考慮すると,生体肝移植においてはステントが必須であると思われる.いずれにしても合併症の対処にはIVRの有用性は顕著であり,手術も含めて最善の方法を考慮すべきである.

キーワード
生体肝移植, 肝静脈閉塞, 門脈血栓, 肝動脈血栓, 胆道合併症

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