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日外会誌. 103(5): 428-434, 2002


特集

生体肝移植の現況と展開

5.術後合併症とその対策
1)感染症, 拒絶反応

岡山大学大学院 医歯学総合研究科消化器・腫瘍外科

八木 孝仁 , 田中 紀章

I.内容要旨
1996年8月から2001年1月までに当科で生体肝移植を施行した41例(小児11例,成人30例,粗生存率90.2%)において,感染と拒絶について解析した.感染症が原因の死亡例は認められなかったが,活動性感染症は26.8%の患者にみられ起炎菌はP. aeruginosa, MRSAが多かった.また,真菌感染症では,カンジダ抗原とβ-Dグルカンの陽性化が半数以上の患者でみられたものの,fluconazoleの予防的投与により,深在性真菌症へ発展しなかった.ウイルス感染の多くはcytomegalovirus(CMV)で22%にみられたが,早期診断とgancyclovirによる治療により重症化はなかった.また術前・術後に強い免疫抑制がかかった3症例にPTLD(posttransplant lymphoprolipherative disease)が見られた.
全症例で,第5~7病日のメチルプレドニゾロンパルス(programmed pulse, 10mg/kg/day)を施行したが,急性拒絶反応は46.3%の患者に発生した.このうちステロイド抵抗性拒絶は3例でさらに2例はOKT-3にも抵抗性であり死に至った.
術後2週間は,1日2回の超音波検査を拒絶診断に利用しているが,のべ30回の急性拒絶反応を2週間以内の超音波検査で検出できたもの:hemodynamic change(+)群(7例)とできなかったもの:hemodynamicchange(一)群(23例)とに分けてみると,前者は有意に早期に(programmed pulse終了直後,8.8 ± 2.2 vs 38.7 ± 29.6日,p<0.01)発症していた.また,逸脱酵素の上昇(883 ± 3541U/L vs 198 ± 1151U/L, P<0.01)や組織学的重症度の検討においてもhemodynamic change(+)群が優位に重症であった(rejection activity index, 6.1 ± 1.2 vs 3.0 ±0.5, p<0.001).
Programmedpulseと超音波検査を組み合わせることにより,術後早期の重症拒絶の診断と治療をより的確で迅速に行うことができる可能性が示唆された.

キーワード
生体肝移植, 感染症, 拒絶反応, programmed pulse, 超音波診断


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