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日外会誌. 103(4): 371-375, 2002


特集

食道癌診療の現況と展望

3.食道癌の治療
7)遺伝子治療

千葉大学大学院 先端応用外科学

島田 英昭 , 松原 久裕 , 落合 武徳

I.内容要旨
食道癌は,診断時点ですでに進行癌であることが多い悪性度の高い腫瘍である.術前の補助療法により腫瘍の縮小を試みているが,放射線化学療法にも抵抗性の症例多く新たなる集学的治療法の開発が求められている.近年,発癌過程での遺伝子変異の概念に立脚して,種々の癌遺伝子治療が開発されている.我々は,食道癌の発癌初期段階から約半数にp53遺伝子異常を認めていること,p53遺伝子異常は化学療法に対する抵抗性と関連していること,予後不良因子であることなどを明らかとしてきた.そこで,新たな治療戦略として進行食道癌に対するp53遺伝子治療の基礎的検討をすすめてきた.1997年には臨床試験計画を申請し,1998年に千葉大学医学部倫理委員会にて承認された.1999年には厚生省並び文部省において臨床試験計画が承認され,2000年5月にベクターの安全性審査が終了した.2000年10月より適応症例の登録を開始し,12月より第1症例の治療を開始した.2001年12月現在までに,計8例の治療候補症例が入院し,厳正なる審査の結果,計4例の治療を実施した.いずれの症例も重篤な副作用なく順調に経過している.

キーワード
食道癌, 遺伝子治療, p53, 臨床試験


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