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日外会誌. 103(3): 300-303, 2002


特集

創造と調和-Creativeness and Cooperation-

Ⅰ.臨床外科学と基礎医学
6.再生医学と人工臓器-現状の問題点と将来への展望

東北大学大学院 外科病態学消化器外科分野

松野 正紀

I.内容要旨
再生医学と人工臓器は21世紀での発展が最も期待されている分野である.多くの臓器で体性幹細胞が明らかとなり,再生因子を使用することにより,in vivoex vivoでの再生誘導による治療が期待される. 一方,すべての臓器に分化しうるヒト胚性幹細胞(ES細胞)が樹立され,クローン技術の応用により自己の細胞由来のES細胞の作製も夢ではなくなってきているが,その一方,クローン人間作製も可能となりつつあり,倫理的・社会的な歯止めは急務である.
人工臓器開発も腎臓や心臓など,分子篩としての機能やポンプ機能を代行することは可能であり,さらなる改良が加わっている,今後,マイクロインダストリーの応用により,より小型化・高機能化が期待される.一方,肝臓などの多機能な臓器を人工的に代行するためには細胞機能を組み込んだハイブリッド人工臓器が主流となっている.異種動物細胞の使用は望ましくなく,再生医学や遺伝子工学の応用によるヒト細胞使用が必要となろう.
再生医学と人工臓器は21世紀を担う医療の両輪と成りうるものであるが,倫理的・社会的影響を十分考慮した上で,細胞機能の一つひとつを明らかにして行く,地に足をつけた地道な研究が必要であろう.

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