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日外会誌. 103(3): 294-299, 2002


特集

創造と調和-Creativeness and Cooperation-

Ⅰ.臨床外科学と基礎医学
5.人工肝臓の現状と問題点

九州大学大学院 消化器・総合外科(第2外科)

杉町 圭蔵 , 島田 光生 , 杉町 圭史

I.内容要旨
我が国では年間約4万人の方が肝疾患で亡くなっており,これは諸外国に比べ非常に高率である.また,慢性肝不全で入退院を余儀なくされている患者も多いが,今日における末期肝不全に対する唯一の根本的治療法は肝移植である.
一方,肝移植は脳死ドナーの不足のため,移植を受けることが出来る患者が少なく,しかも移植患者は免疫抑制剤を一生飲み続けなければならない.そこで,ドナー肝入手・肝移植までの生命維持=橋渡し治療としての人工肝臓,あるいは,可逆性のある急性肝不全などの肝再生補助=根本的治療としての人工肝臓などいろんな用途に応じた人工肝臓の開発が急務である.
肝臓には,代謝,解毒,分泌など600くらいの機能があると言われているが,理想的な人工肝臓には,十分な代謝能,簡便性,生体適合性,経済性などが要求される.
我々は,九大工学部と共同でポリウレタンフォームを利用した人工肝臓を開発しており,ブタを用いた前・臨床実験で生存期間延長,血糖値維持,アンモニア上昇の抑制などがあることを確認している.
ところが,ブタ内因性レトロウィルスのヒトへの感染がおこりうることが明らかとなり,ブタ肝細胞を臨床で使用するには大きな問題があることがわかった.そこで世界の人工肝臓開発の現状と問題点について述べてみたい.

キーワード
人工臓器, ブタ内因性レトロウィルス, 異種移植ガイドライン, 再生医療


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