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日外会誌. 103(2): 229-232, 2002


特集

肺癌非手術療法の新しい試み

4.抗癌剤感受性試験

慶應義塾大学 医学部呼吸器外科

川村 雅文 , 井上 芳正 , 小山 孝彦 , 小林 紘一

I.内容要旨
切除不能非小細胞肺癌は消化器系の癌に比べ検体の採取が困難なこともあって抗癌剤感受性試験があまり行われてこなかった.そこで少ない検体量からも感受性試験を行うことができるcollagen droplet embedded culture drug sensitivity test(CDDST法)をわれわれは採用した.本法の測定成功率は,切除検体で86.1%(292/339),気管支鏡下生検検体35.4%(23/65),表剤リンパ節86.0%(37/43),縦隔リンパ節63.8%(37/58),胸水69.0%(40/58)である.本試験により有効判定薬剤を投与した28例では21例がCRもしくはPRとなり真陽性率は75.0%,無効判定薬剤が投与された20例では3例がPRとなり真陰性率は85.0%,正診率は79.2%であった.
本試験に基づいて高感受性群(同効薬を除いた2剤以上に感受性あり)34例と低感受性群(有効薬剤無し)21例および中間群に分類し,高感受性群と低感受性群の2群について累積生存率を求めると,高感受性群が1生率 86.9%,2生率83%,低感受性群が88.9%,80%で両群間に有意差を認めず(p=0.71;Logrank),抗癌剤感受性の高低は化学療法を行わない限り予後と独立した因子であることが示された.
前治療のない切除不能非小細胞肺癌で感受性薬剤が実際投与された11例と感受性薬剤が無かった16例の予後は,感受性薬剤投与群が1生率72.7%,2生率18.2%,MSTが15.8M,感受性薬剤無し群が16.7%,0%でMSTが5.6Mで両群間に有意差を認めた.(p=0.0048;Logrank)
抗癌剤感受性試験(CDDST法)は切除不能肺癌に応用可能であり,本試験に基づいた化学療法は肺癌においても予後を延長しうることが示唆された.

キーワード
肺癌, 抗癌剤, 感受性試験, 化学療法


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