[書誌情報] [全文PDF] (1752KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 102(12): 856-859, 2001


特集

各科領域の抗菌薬ガイドライン

6.一般消化器外科領域のガイドライン

東邦大学 医学部外科学第3講座

炭山 嘉伸

I.内容要旨
一般消化器外科領域の抗菌薬の使用目的は,周術期における術後感染の発症を予防する目的で投与される「後感染予防薬」と術後感染が発症した症例に対する「感染治療薬」に大分される.消化器外科の周術期の抗菌化学療法は「術後感染予防薬」と「感染治療薬」を明確に分けて考える.術後感染は,術野感染(手術操作が直接及ぶ部位の感染症:創感染と腹腔内膿瘍)と術野外感染(手術操作が直接及ばない部位の感染:呼吸器感染やカテーテル感染,尿路感染)に大別される.術野感染の起因菌は術野の汚染菌,つまり手術中に開放となった消化管や胆管内の常在細菌であり,多くは内因性感染の形をとる.術野外感染の起因菌は多くは院内環境の汚染菌であり,外因性感染の形を取ることが多い.このため,術後感染予防薬は,通常は,術野感染を目的として,遠隔感染までは目的とはしないことが基本的である.そして,術野の汚染菌は手術臓器によって異なるため,手術対象臓器によって異なる.術後感染予防薬の投与開始時期は,術野が最も汚染される,すなわち,消化管が開放となるときに血中濃度・組織内濃度が高いことが要求される.よって,消化管が開放となる1時間前が理想的である.このため,短時間手術では術前から投与される場合もあるが,一般的には手術開始時に投与を開始する場合が多い.さらに,長時間手術では3時間毎に再投与する.そして,一般的に抗菌薬が3~4日間投与されると,その薬剤に対する耐性菌が出現することから,術後感染予防の抗菌薬の投与期間は,手術当日を含め,3~4日間に止める.一方,汚染手術ではすでに感染が成立しているために,診断確定時に感染治療薬の投与が開始される.特に,大腸穿孔ではエンドトキシン血症を起こしていることも多く,救命を第1に考えた強力な化学療法が必要となる.

キーワード
術後感染予防薬, 術後感染治療薬, 術野感染, 準汚染手術, 汚染手術


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。