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日外会誌. 102(12): 846-850, 2001


特集

各科領域の抗菌薬ガイドライン

4.呼吸器外科領域の抗菌薬ガイドライン

東京医科大学 第1外科

平野 隆 , 河野 貴文 , 加藤 治文

I.内容要旨
呼吸器外科領域における特殊性を踏まえ術後感染症予防・治療における抗菌薬使用について術後感染症のリスク因子・術後感染予防・術後感染治療の3つの側面から概説する.術後感染症のリスク因子:術後感染のリスク因子について患者側の要因の関与を予め検討することが重要である.呼吸器外科手術の対象となる疾患は重度喫煙歴と関連していることが多く,術前から低肺機能を示す症例が多いことを常に念頭におかなければならない.術後感染予防:縦隔郭清に伴う気道上皮におけるクリアランスシステムの崩壊,肋骨切離を伴う開胸による創痛と呼吸・咳嗽の抑制などで容易に気道感染症を発症しやすい.このような環境にある呼吸器外科手術後の特殊事情を考慮しなければならない.そこで術後3~4日間を目安に抗菌薬の投与を行う.呼吸器術後感染症ではグラム陰性桿菌の出現が多いとされ,一般的には第2世代セフェム系薬剤が選択される.術後感染治療:術後感染症は術後の発熱・血液検査所見(白血球数・CRP)の変動・胸部レントゲン写真所見・胸腔ドレナージよりの排液の性状から判断する.原因細菌が同定されていない段階ではグラム陽性菌ではMRSAを,グラム陰性菌では緑膿菌を念頭に入れた抗菌薬剤の選択が重要である.原因菌の同定後はその薬剤感受性に従って投与薬剤を変更すべきか否か判断する.
当科における術後感染症の実態を示しながら呼吸器外科領域における適切な抗菌薬使用について言及する.

キーワード
周術期呼吸器感染症, 緑膿菌感染症, MRSA 感染症, 呼吸器外科手術, 抗菌薬ガイドライン


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