[書誌情報] [全文PDF] (2492KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 102(12): 842-845, 2001


特集

各科領域の抗菌薬ガイドライン

3.心臓血管外科領域の抗菌剤ガイドライン

大阪大学大学院 医学系研究科機能制御外科学

松田 暉 , 福鴬 教偉

I.内容要旨
心臓血管外科手術は,本来無菌的手術と考えられるが,入工材料を使用することが多いこと,補助手段として体外循環を使用すること,術前後の長期就床していたり,各種カテーテルの長期留置のために,外部から病原微生物が体内に持ち込まれたり,体内の病原微生物が増殖・転移したりして,感染症に罹患することが多い.また,近年は種々の合併症(糖尿病,肥満,肝腎機能障害など)を伴った重症例が多くリスクは高くなる.
多い感染症は,呼吸器感染症(肺炎,膿胸),創部感染症(皮下膿瘍,縫合糸膿瘍,縦隔炎等),カテーテル感染症,敗血症,感染性心内膜炎,尿路感染症である.術前の虫歯,呼吸器感染症,感染性心内膜炎の有無の検索,鼻腔・咽頭の常在菌の検査,危険因子をチェックが重要である,術後の予防的抗生剤は, 一般的に表皮常在細菌又は環境細菌を対象とし,ペニシリン系薬とスルバクタムの合剤や第一世代セフェム系薬を用いる場合が多い.術後炎症所見が遷延した時は,盲目的に広領域の抗菌剤を用いるのではなく,感染部位及び起因菌の同定に努め,感受性,感染部位に応じた抗菌剤を選択することが重要である.
感染性心内膜炎と縦隔炎は術後の予後を左右する合併症である.感染性心内膜炎は、心内膜や弁膜に疣贅を形成する感染症で,人工弁の心内膜炎は予後不良である.原因菌に応じた抗菌剤の選択が重要で,疣贅内の菌を完全に死滅させるには,抗菌剤の大量長期投与を要し,外科的治療を要する場合も多い.縦隔は血行が少なく,縦隔内に死腔ができたり,血腫が残存したりすると,容易に縦隔炎となり,組織移行性の高い抗菌剤の投与に加えて,外科的処置が必要である.
以上,心臓血管外科手術領域の感染症を予防するためには,抗菌剤の選択もさることながら,術前・中・後の感染症を留意した管理が重要である.

キーワード
心臓血管外科, 人工物, 体外循環, 感染性心内膜炎, 縦隔炎

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。