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日外会誌. 102(11): 820-825, 2001


特集

肝臓外科における血行再建

8.胆道癌における肝動脈切除再建の適応と手技

1) 横浜市立大学 第2外科
2) 横浜市立大学 形成外科

遠藤 格1) , 増成 秀樹1) , 杉田 光隆1) , 森岡 大介1) , 田中 邦哉1) , 渡会 伸治1) , 関戸 仁1) , 吉田 豊一2) , 嶋田 紘1)

I.内容要旨
進行胆道癌に対して肝動脈合併切除が行われてから10年以上が経過した現在,マイクロサージェリーの導入によりその安全性はほぼ確保されたといえる.しかし予後へ及ぼす意義についてはいまだ明確ではない.そこで自験胆道癌について安全性を再確認すると共に遠隔成績を検討した.胆道癌切除114例中,血管合併切除施行例は23例(門脈7例,門脈+肝動脈9例,肝動脈7例)であった.ルーペを用いて外科医が再建した時期には再建血管の閉塞による合併症である肝膿瘍が発生したが,形成外科医によるマイクロサージェリーを導入して以来,肝膿瘍の発生はなかった.再建方法はほとんどが右肝動脈と端々吻合したが,症例により胃十二指腸動脈,中結腸動脈,左肝動脈を利用した.cur A+Bの治癒切除率は全体では56.5%(13/23例)であった.疾患別では肝門部胆管癌で88.9%,その他の癌腫では50%未満であった.Cur Cの主な原因は剥離面癌陽性であり,10例中4例が合併切除血管周囲で癌陽性となっていた.血管合併切除再建症例の疾患別5年生存率は,肝門部胆管癌14.8%,中下部胆管癌25.0%,胆管細胞癌,胆嚢癌では0%であった.最長生存期間は,肝門部胆管癌85カ月,中下部胆管癌65カ月,胆嚢癌9カ月,胆管細胞癌20カ月であった.肝門部胆管癌のうちリンパ節転移のない症例には血管合併切除の意義があると考えられた.胆嚢癌,胆管細胞癌では治癒手術に補助化学療法を組み合わせて行い,症例を蓄積したのちに結論を出すべきである.

キーワード
血管合併切除, 肝門部胆管癌, 胆囊癌, 胆管細胞癌, マイクロサージェリー


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