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日外会誌. 102(10): 770-777, 2001


特集

胃癌治療の最近の進歩と今後の問題点

8.胃癌に対する化学療法の現況と今後の展望
日本の化学療法は国際的標準治療と成りうるか?

広島大学原爆放射能医学研究所 腫瘍外科

金 隆史 , 吉田 和弘 , 峠 哲哉

I.内容要旨
胃癌に対する術後補助化学療法のsurvival benefitは,本邦および欧米での臨床試験のメタアナリシスの結果から,stage lに対しては認められていない.一方,stage IIよびIIIに対しては,手術単独群と比較し,MMC,アンスラサイクリン系,アルキル化剤,フッ化ピリミジン系抗癌剤との併用効果が示されているが(odds ratio:0.8~0.82,95% CI<1.0),その効果は小さく,部分的である.また,術後免疫化学療法では,本邦でのMMCおよびフッ化ピリミジン系抗癌剤とPSKあるいはOK-432との併用療法で生存率および腹膜再発防止に及ぼす効果が示唆されている.しかしながら,個々の臨床試験でのstudy design,samplesizeなどの問題点も指摘されており,質の高い臨床試験が必要である.一方,高度進行胃癌あるいは再発胃癌に対する併用化学療法では,low dose FP療法に代表されるbiochemical modulationの導入,あるいはS1などのdehydropyrimide dehydrogenase inhibitory fluoropyrimidine(DIF)に属する新規フッ化ピリミジン系経口剤の登場により,奏効率,QOLの向上,および生存期間の延長が示されている.さらに,タキサン系抗癌剤あるいはシスプラチンなどとの併用により,奏効率の高いレジメンの開発が進行中である.今後,術後補助化学療法の有効性を科学的に実証するためには有効性の高いレジメンが必須であり,かつ治療奏効群の層別および治療の個別化を目指した臨床試験の開発が求められている.

キーワード
胃癌, 化学療法, Evidence-Based Medicine(EBM), 個別化


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