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日外会誌. 102(10): 758-763, 2001


特集

胃癌治療の最近の進歩と今後の問題点

6.胃癌手術治療の国際的標準化の課題

国立がんセンター中央病院 外科

佐野 武 , 片井 均 , 笹子 三津留 , 丸山 圭一

I.内容要旨
日本と欧米では胃癌の治療成績に大きな差がある.手術法の違いやstage migrationがこの差を生んでいる可能性が高い.互いを理解しようとしても,悪性腫瘍のリンパ節転移などに関して基本的な考え方の相違がある.乳癌治療の変遷を教科書としてきた欧米では,癌は早期から全身化しやすく,リンパ節転移は全身化の指標にはなるがリンパ節郭清の治療効果は少ないと考える.これに対し胃癌治療の経験を中心として膨大なデータを積み重ねてきた日本では,癌はリンパ節を含む局所に長くとどまり,早期発見で治癒し,リンパ節の郭清効果は高いと考える.こうした姿勢の違いを理解した上で議論しなければ話が噛み合わない.TNM分類の1997年の改訂では,リンパ節の解剖学的分類が姿を消し,転移リンパ節個数でNが分類されるようになった.これは予後の指標としては優れた分類であるが,外科医の手術時の判断には役に立たない.郭清範囲を規定する上で重要な日本の胃癌取扱い規約N分類を,今後も有効に活用していく必要がある.胃癌治療に関する国際的な標準化を目指すには,辛抱強い話し合いの努力が必要である.

キーワード
胃癌, TNM 分類, 取扱い規約, リンパ節郭清, 国際比較

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