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日外会誌. 102(10): 741-744, 2001


特集

胃癌治療の最近の進歩と今後の問題点

2.胃癌における微小転移の分子生物学的診断とその臨床的意義

鳥取大学 医学部第1外科

辻谷 俊一 , 貝原 信明

I.内容要旨
胃癌では病理学的に転移が明らかでなくても,少数の癌細胞による微小転移が生じている場合があり,それが治癒切除術後の再発に結びついている.M癌の段階でもリンパ節や血液中への微小転移が検出され,SM癌やリンパ節転移のないT3癌で,サイトケラチン免疫染色でリンパ節への微小転移例の予後は有意に不良であった.一方,M癌症例では微小転移の有無は予後に影響しなかった.早期癌の多くはこれまでD2リンパ節郭清が行われてきたが,EMRなどでリンパ節郭清を省略した縮小治療の選択される機会が増えてくると,微小転移が予後に影響すると予想される.また,術中腹腔細胞診において,CEA mRNAやTelomerase活性を指標として腹腔内微小転移癌細胞を検出すると,細胞診陰性例にも微小転移が検出された.術後腹膜再発をきたした症例はいずれも微小転移陽性であり,腹腔内微小転移は腹膜再発の危険因子として重要と考えられた.したがって,胃癌の微小転移を認めた症例に対しては,その意義を慎重に考慮してリンパ節郭清の範囲や強力な化学療法などを決定する必要がある.

キーワード
gastric cancer, micrometastasis, cytokeratin, CEA, telomerase

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