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日外会誌. 102(9): 637-641, 2001


特集

頸部食道再建術

4.頸部食道癌に対する喉頭温存術式の工夫と限界

国立がんセンター中央病院 外科

加藤 抱一

I.内容要旨
喉頭温存術式の中で,究極の温存手段として工夫した1手術術式を紹介する.この術式の工夫のポイントは,頸部食道癌を切除・再建する場合に,すぐ前に存在して視野を妨げている気管を一時的に切断,断端を上下に翻転することによって,頸部食道全景を1視野に納めることができるようにした上で,十分な断端距離を保って頸部食道癌の切除・再建術を行うことである.頸部食道の再建法は遊離腸管移植の場合でも,食道抜去後の全胃を用いた場合でも応用可能である.対象は頸部食道がんで,口側断端に余裕が無く,喉頭の背側での消化管吻合が困難な場合にこの手技が有効となる.根治手術にも姑息手術の場合でも応用可能な手技であり,理論的には気管に僅かに浸潤しているような頸部食道癌の場合でも,気管の分節的合併切除および端々吻合ですむ場合には応用可能である.気管横切部位の再吻合は視野がよいこともあり技術的に容易で,たとえ縫合不全がおこっても一時的に気管瘻にして対処できる比較的安全な手技である.癌が浸潤していないかぎり両側反回神経の温存も可能である.

キーワード
頸部食道癌, 喉頭温存術式, 気管吻合, 遊離空腸移植, 食道抜去術

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