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日外会誌. 102(8): 608-611, 2001


特集

複雑先天性心疾患外科治療の最近の進歩

9.左心低形成症候群

岩手医科大学 循環器医療センター外科

石原 和明

I.内容要旨
左心低形成症候群(以下HLHSと略す)は先天性心疾患外科治療上,最も治療が困難な疾患群である.それは本症に対する外科治療の第一期手術が新生児期の開心姑息手術に頼らざるを得ない点にある.最近では複雑心奇形に対しても積極的に新生児期一期的開心根治術を行い,治療成績は著しく向上した.しかしながら,本症は通常,3回の段階的手術により,漸く機能的根治術に到達できる.二期手術(両方向性Glenn手術),あるいは三期手術(Fontan手術)の成績は初回手術に比較して良好で,他疾患に対するそれら術式の成績に比し,劣ることはない.従って,本症の外科治療成績の向上のためには,第一期手術であるNorwood手術の成績向上がHLHSの治療上重要である,初期の頃,Norwood手術は,術式だけでなく周術期管理,体外循環法などが十分確立されず,成績は不良であった.最近ではBT shuntの人工血管径を細めたり,術後に肺血管抵抗を調節したりすることにより,一年生存率が50%を越える成績が報告されるようになった.一方ではNorwood手術の成績が不満足であるため,治療法として心移植を選択する施設もあるものの,ドナー不足から移植待機中に死亡する症例もある.現在では胎児エコーの普及によりHLHSの出生前診断が可能となり,妊婦や家族への情報提供により,その治療選択を家族に委ねる施設も出現した.出生後からの外科治療だけでなく,HLHSの胎児,患児を囲む家族と医療スタッフとの緻密な連絡と相互信頼に基つく治療体系の構築が必要である.

キーワード
左心低形成症候群, Norwood手術, 両方向性Glenn手術, Fontan手術


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