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日外会誌. 102(8): 595-601, 2001


特集

複雑先天性心疾患外科治療の最近の進歩

7.先天性大動脈狭窄(congenital aortic stenosis)

兵庫県立こども病院 心臓胸部外科

山口 眞弘

I.内容要旨
大動脈弁狭窄に対する弁切開術の成績は,一般に幼小児では良好であるが,新生児,幼若乳児のcritical ASでは,いまだ不良である.しかし最近では新生児例でも手術死亡率15%以下の報告も増加している.Critical ASに対するballoon valvuloplastyでも新生児の生存率75%,5年での心事故回避率50%との報告も見られ,現時点でcritical ASに対する治療法として,バルーンと弁切開術の何れが勝れているのかを結論付けることは難しい.
弁切開を行えば有意の弁閉鎖不全が必発と考えられるときは弁置換の適応となるが,弁輪が小さい症例や幼小児例では,弁輪の拡大形成術が必要となる.1991年に発表された大動脈弁輪両側拡大法では,僧帽弁の変形,主要冠動脈枝や刺激伝導系の損傷左室機能障害などの危険性もなく,自己大動脈弁輪よりも3~4サイズ大きな人工弁の挿入が可能となる.1967年に発表されたRoss手術は,1990年代に入って,新鮮凍結同種弁の入手が容易な欧米で急速に普及した.手術死亡率は5%以下,1~5年の追跡期間で再手術は0~11%と報告されている.Ross手術は,人工弁置換に比べて手術手技が煩雑で長時間を要するが,術後の左室機能は良好で,圧較差も少なく,移植された肺動脈弁は患児の成長と共に発育するとの報告が多い.しかし新大動脈の拡大による弁逆流の発生は,小児におけるRoss手術の今後の問題点としてさらに長期の観察が必要であるとする報告もある.
わが国の現状では,新鮮凍結同種肺動脈弁の入手は容易でなく,遠隔期の右室流出路病変が問題となる.二葉機械弁による小児期弁置換術の最近の成績も極めて良好で,成人サイズの弁が挿入可能な場合に,人工弁を用いるか,Ross手術を行うかは未だ議論のあるところである.人工弁の使用が困難な乳幼児,左室流出路狭窄合併例,妊娠,出産の可能性が高い若年女性などにおいては,RossあるいはRoss-Konno手術が第一選択術式となるのは異論のないところと思われる.

キーワード
先天性大動脈弁狭窄, critical aortic stenosis, extended aortic valvuloplasty, 大動脈弁輪両側拡大術, Ross手術


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