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日外会誌. 102(8): 566-572, 2001


特集

複雑先天性心疾患外科治療の最近の進歩

2.新生児,乳児期大動脈縮窄・離断複合の外科治療

福岡市立こども病院 心臓血管外科

村上 淳 , 角 秀秋

I.内容要旨
新生児,乳児期の大動脈縮窄(CoA),大動脈弓離断(IAA)複合症例の手術成績を報告するとともに,最近の外科治療の動向について言及する.1991年1月から2000年12月までの10年間に当施設で経験した新生児,乳児期CoA, IAA複合は142例(CoA複合94例,IAA複合48例)であった.手術時年齢は平均37日(3~210日),体重は平均3,114g(1,120~5,640g)であった.CoA複合では一期的根治術33例,二期的根治術61例で,死亡率は各々6.1%,6.6%,累積5年生存率は94%,93%,術後再狭窄率は8.8%,3.3%であった.大動脈の再建法別の再狭窄率は鎖骨下動脈フラップ法(SCF)57例中2例(3.5%),拡大大動脈弓吻合(EAAA)による再建法37例中3例(8.1%)であった.IAA複合では一期的根治術41例,二期的根治術7例であり,死亡率は各々9.8%,28.6%,累積5年生存率は93%,71%,大動脈再建後の再狭窄は1例のみであった.本疾患群に対する治療方針は,現在CoA, IAA複合ともに一期的根治術が主流となっているが,患児の術前状態や合併心奇形の重症度によっては二期分割手術も視野に入れた柔軟な治療戦略が肝要である.また,大動脈弓再建法としてはEAAA法が汎用されているが,CoAに対してはSCF法も優れた術式であり,現在でもその臨床的意義は大きいものと思われる.一期的根治術に際しては,大動脈再建時の体外循環補助手段として下行大動脈送血法が導入され注目されている.手術手技および補助手段の更なる改良により手術成績は向上していくものと思われる.

キーワード
大動脈弓離断複合, 大動脈縮窄複合, 一期的根治手術, 大動脈再建, 下行大動脈送血法

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