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日外会誌. 102(7): 535-540, 2001


特集

肺癌の手術適応の再検討

9.術前療法から見た再検討

京都大学 医学部呼吸器外科

田中 文啓 , 和田 洋巳

I.内容要旨
術前導入療法の臨床的意義について,局所進行非小細胞肺癌を中心として概説した.縦隔リンパ節転移陽性ⅢA期 pN2症例の術後成績は極めて不良であり,有効な術後補助療法が確立されていないことから,術前治療に期待がかけられた.術前療法として放射線単独の有効性は証明されなかったものの,プラチナ製剤を中心とした多剤併用化学療法あるいはこれに放射線の同時併用を加えた術前治療の有効性を示唆する第2相臨床試験の結果がいくつか報告された.術前治療なしに外科切除を施行した症例と術前化学療法後外科切除施行症例の予後を比較した第3相試験においても局所進行非小細胞肺癌に対する術前療法の有効性が示唆された.しかしながらこれらの臨床試験の結果は,症例数の少なさや症例背景の不均一さ,等の問題点が指摘されており,術前療法の有効性が確立したとはいい難い.最近ではタキサン系薬剤やGemcitabine等のいわゆる新規抗癌剤が相次いで臨床導入され,これらを含む術前療法の有効性の報告も散見されるようになってきた.これらの術前治療の有効性を示唆する報告にもかかわらず,局所進行非小細胞肺癌はその不良な切除成績のためにヨーロッパ・米国では通常,外科切除は選択されないのが現状であり,今後局所進行症例に対する術前治療の有効性や外科切除の妥当性を検討していくべきであろう.そのためには,たとえば縦隔鏡で組織学的に確認されたⅢA期 T1-2N2症例のみといったより均一な症例を対象とした,十分な症例数による,第3相比較試験による検討が必要と考えられる.

キーワード
非小細胞肺癌, 術前療法, 化学療法, 放射線療法, 手術成績


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