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日外会誌. 102(6): 484-489, 2001


特集

リンパ節の癌転移病態と至適郭清

7.胃癌における至適リンパ節郭清
-早期胃癌について-

金沢大学 医学部外科学第2講座

三輪 晃一

I.内容要旨
早期胃癌392例のD2の10年再発率は2.1%で, D1の11.9%に比べて低い.これを,転移の有無別でみると,有る例ではD2が12.5%で, D1の44.4%に比べて低いが,無い例ではそれぞれ,1.6%,3.3%で差異はない.すなわち,早期胃癌のリンパ節郭清は転移の有る場合はD2,無い場合はD1でよい.転移の有無の診断にはセンチネルリンパ節生検が有用である.内視鏡下で,胃癌周囲粘膜下層ヘパテントブルー0.2mlを注射するintraoperative endoscopic lymphatic mapping(IELM)は,その胃癌のlymphatic basinを描出する.203例の経験では,検出されるセンチネルリンパ節は中央値6個で,その成績はsensitivity 89%,specificity 100%,accuracy 98%であった. false negative 4例は肉眼的転移例で,術中に容易に診断できた.リンパ節転移35例の転移部位は,高度なリンパ系侵襲を見る1例を除きlymphatic basinに属していた.うち15例はセンチネルリンパ節にのみ転移を認めた.胃のlymphatic basinは5流域に分類されるが,早期の胃癌では1流域が42%,2流域が47%,3流域が12%で,4流域以上は認められなかった.これらの成績は,早期胃癌の転移はCollerの胃のリンパ区分に従って生じていることを示している.通常の転移診断はリンパ節のhilusを含む1組織切片で行われているが,連続切片,免疫組織染色,腫瘍関連マーカーのRT-PCRでの検索の場合より転移率が低く,false negativeがあると考えられる.従って,センチネルリンパ節生検で癌陰性とされても,lymphatic basin dissectionを行っておくのが無難である.転移陽性例には,conventional D2で万全を期すべきである.

キーワード
胃癌, 手術, リンパ節郭清, センチネルリンパ節

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