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日外会誌. 102(6): 449-452, 2001


特集

リンパ節の癌転移病態と至適郭清

2.リンパ節の癌転移病態
4)RT-PCRによるmicrometastasis検索の意義

岐阜大学 医学部第2外科

国枝 克行 , 山口 和也 , 佐治 重豊

I.内容要旨
リンパ節転移は最も重要な予後規定因子であり,癌の手術においてリンパ節郭清は根治性を得るために不可欠な操作である.しかし,根治切除施行例の中にも20~30%に再発例がみられ,これらの症例では通常の組織学的検査では診断できないmicrometastasis(MM)が遺残した可能性が推察される.そのため,より高感度のMMの検索法の開発が望まれていたが,近年RT-PCRなどの分子生物学的手法の導入により,細胞レベルでのMMの検出が可能となった.本稿では,RT-PCRを用いたリンパ節MMの検索に関する研究の動向とその意義について概説する.RT-PCRによるMMの検索はSmithらが悪性黒色腫患者の末梢血について施行したことに始まる.以来乳癌,大腸癌をはじめ種々の癌患者のリンパ節,血液,骨髄などについて,多種類のマーカーを用いて検討されてきた.リンパ節MMについても種々の癌について検索されており,いずれの報告も従来の組織学的手法に比較して優れた感受性を示している.しかし,少数例での検討が多く,MMの有無と予後との関係を明らかにした報告は極めて少ない.一方,RT-PCRに用いる最適マーカーは未だ定まっていないが,CEA, CK20, mammoglobinが陽性率,特異性に優れているようである.RT-PCRによるMM検索により,より正確な癌の広がりを知ることができ,治癒切除術後患者の予後予測や術後化学療法が必要な患者を選別する有力な手段になると考えられる.さらに術中にsentinel lymph nodeの診断に利用すれば,信頼度の高いnavigation surgeryが可能になると期待される.そのためにもRT-PCRによるMMの有無と予後との関連性を多施設共同試験などにより早急に明らかにすべきと考えられる.

キーワード
RT-PCR, micrometastasis, lymph node metastasis, prognostic factors, CEA

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