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日外会誌. 102(4): 315-319, 2001


特集

弁膜症手術の最近の動向

4.僧帽弁置換術の長期成績

NTT東日本関東病院 心臓血管外科

中野 清治

I.内容要旨
僧帽弁置換術における遠隔成績に関する最新のデータを示すと供に,最近の話題について検討した.機械弁に関しては,現在二葉弁が主流で6種類の二葉弁が販売されている.St. Jude Medical(SJM)弁は世界でも本邦でも最も多く植え込まれており,その実績は確立されている.新たに参入した二葉弁がSJM弁を越えるものかどうかが興味の対象であるが,明確な差は今のところ認められない.いずれにしても最も多い合併症である血栓塞栓症においても頻度は数%かあるいはそれ以下である.しかし,機械弁においてワーファリンの内服は不可欠であり,生体弁に対する興味も失われていない.生体弁の耐久性に関しては,弁破損に対する回避率が第二世代であるCarpentier-Edwards牛心膜弁において,14年でactuarial rateが69%で, actual rateは83%であり,ブタ大動脈弁であるHancocklI弁では,12年でactuarial rateが82%であるとの報告がある.現在僧帽弁位に生体弁が使用されている頻度は本邦では10%前後である.僧帽弁位にも高齢者に生体弁を選択するかどうかに関しては議論のあるところであり,正確な情報の提供とinformd consentが重要であると考える.手術手技としては腱索温存術式が通常の弁置換に比べ心機能の点からも,左室破裂予防の点からも有利とされている.後尖だけでなく前尖と乳頭筋との連続性を保った術式が幾つか示されている.また,リウマチ性の弁膜症などで,弁下部の変化が強い場合には,弁を切除したあとで,人工腱索により乳頭筋と弁との連続性を新たに作る手技も報告されている.更に腱索の固定部位が左心機能に及ぼす影響に関する動物実験などがある.いずれにしてもこれらの術式の優位性が結論づけられている.

キーワード
僧帽弁置換術, 腱索温存術式, 生体弁, 人工弁関連合併症

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