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日外会誌. 102(4): 304-309, 2001


特集

弁膜症手術の最近の動向

2.僧帽弁形成術の適応と成績

岩手医科大学 第3外科

川副 浩平

I.内容要旨
リウマチ性弁膜症の減少とともに,僧帽弁狭窄症の殆どを非リウマチ性MRが占め,弁形成術が奏功し易い条件が整って来たと言える.今やMRに対する弁形成術は,多数例の長期間の成績によってすでに確立された手術法となり,交連領域前尖を含む後尖の切除と前尖に対する人工腱索移植法によって,MRの95%が弁形成術の対象である.もともと,僧帽弁置換術に比し,弁形成術の手術成績が明らかに優れ,また術後の合併症も有意に少ないことは,数多くの報告に示されて来た通りである.弁形成術の唯一の課題であった再手術の頻度も,技術的進歩と,病変の再発を来たし易いリウマチ性MRの減少によって,術後10年の再手術非発生率が90%以上と,弁置換術のそれと比肩し得るようになって来た.加えて,心臓超音波検査の長足の進歩によって弁形成術の術前における予測性が飛躍的に向上し,MRにおける手術適応が軽症例ではより早期に考慮され,重症例にも積極的に外科治療が導入されるようになった.高度な逆流がありながら無症状(NYHA class Ⅰ度)で経過する場合でも,左室機能の低下傾向や不整脈が認められる時点で弁形成術を行って,根治手術としての意義を高めることができる.さらに,これらの所見がない場合にも,MRから解放されてより積極的な人生を設計する患者に弁形成術を適用することも決して稀ではない.他方,重症の左室機能障害を合併する高度MRに対しても,術後に左室機能の低下を来さない弁形成術が用いられ,好成績が得られるようになっている.

キーワード
僧帽弁閉鎖不全症, 弁形成術, 人口腱索移植術, 手術適応, 弁関連合併症


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