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日外会誌. 102(3): 266-269, 2001


特集

外科学-新しい潮流

I.21世紀の外科学会への提言
4.21世紀初頭に向けて思うこと

新潟大学 医学部第1外科

畠山 勝義

I.内容要旨
21世紀初頭に向けて,日本外科学会に関連して思っていることについて述べてみたい.20世紀後半の医学の進歩は著しく,21世紀もこの進歩・発展は加速度的に進むものと思われる.特に分子生物学的研究の進歩は著しく,2000年6月にはヒトゲノムについてその解読がほぼ終了したと発表された.特に癌研究においては,このヒトゲノムの解読は大きな進歩を促すものと思われる.癌の治療方針を決める上で極めて重要な,悪性度や転移能を予測する遺伝子群,抗癌療法,免疫療法,放射線療法等の効果を左右する遺伝子群が見つかれば,各個人の癌患者に適した,いわゆる「オーダーメイド治療」の可能性も見えてくる.このような新しい知見に基づき,外科医療も大きく変革せざるを得ない可能性が大きいと思われる.また,疾患に対して「integrative medicine(統合的医療)」という概念が現実化し,外科医療はその一部を担うことになることも予想されるが,外科学会もこれらの改革に直ちに対応していかなければならないと思われる.一方,卒後臨床研修の必修化が法案として可決された現在,卒前教育や大学院教育と整合性を保ちながら,消化器外科専門医,心臓血管外科専門医,呼吸器外科専門医や小児外科専門医の一階部分としての外科専門医のカリキュラムなどを検討しなければならないと思われる.また,最近の医療過誤の報道が相次ぎ社会的な問題になっており,その発生防止に向けたリスクマネージメントが重要な課題となっている.一方,ヘルシンキ宣言(2000年10月に修正)に代表される,ヒトを対象とする医学研究に対する倫理的原則とした,医の倫理のガイドラインは医学・医療を行っていく上で,避けられない問題の一つである.これらの問題は,特に手術医療を主とする外科分野においては重要であり,外科的立場からの検討,すなわち外科学会としての検討も必要であると思われる.

キーワード
医学の進歩, 外科医の教育, 医療過誤, リスクマネージメント, 医の倫理

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