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日外会誌. 102(2): 215-219, 2001


特集

肝膵同時切除術(HPD)をめぐって

5.胆管癌に対する手術適応と成績

1) 東京大学 医学部胆膵移植外科
2) 信州大学 医学部第1外科

野家 環1) , 脊山 泰治1) , 今村 宏1) , 小林 聡2) , 宮川 信一2) , 川崎 誠治2) , 幕内 雅敏1)

I.内容要旨
根治性の面からは拡大右肝切除+PD(以下, rtHPD)が望ましい胆管癌が少なからず存在する.しかし,一般にrtHPDはmortalityが高く,胆管癌に対するrtHPDの適応は,安全性と長期成績の両面から検討されなければならない.
過去約10年間に経験した胆管癌のうち,rtHPD症例8例と,半肝以上の肝切除を伴う肝外胆管切除43例の成績を比較検討した.rtHPDの適応は,肝門部胆管から下部胆管にまでおよぶ広範囲胆管癌である.術前に,閉塞性黄疸症例には減黄処置(左右両側間の胆管の交通が途絶している場合には片側ドレナージ),拡大右肝切除または左3セクタ切除症例には門脈枝塞栓術行い,手術では,rtHPD症例に対しては,膵消化管吻合を行わず,膵外瘻・二期再建を原則とした.
rtHPD症例の平均手術時間は938(715~1305)分,平均出血量は1579(500~2060)mlで,非HPD症例に比し有意に大であったが,在院死亡・肝不全を認めなかった.rtHPD症例の累積5年生存率は71%で,非HPD症例の42%と差を認めず,8例中4例の5年生存を認めた.
rtHPDを行うことにより初めて予後改善が期待できる胆管癌症例が存在し,本来rtHPDの適応である.しかし,rtHPDを安全に行えることが大前提であり,PDおよび肝切除の手術数が多く術死入院死のない施設でなければrtHPDを行ってはならない.

キーワード
胆管癌, 胆膵同時切除, 拡大右胆切除, 門脈枝塞栓術, 膵外瘻


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