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日外会誌. 102(2): 195-198, 2001


特集

肝膵同時切除術(HPD)をめぐって

1.肝膵同時切除(HPD)をめぐって
-特集によせて-

三重大学 医学部第1外科

川原田 嘉文

I.内容要旨
進行胆道癌に対し1980年頃から根治性を求め,積極的に肝膵同時切除が施行されるようになった.当時(1984~1989年)全国に先駆け,雑種成犬を用いて肝膵同時切除の病態生理と肝膵同時切除の切除限界を求めていた.その実験結果は,HPDを行っても膵切除量が大きい程死亡率が高く,また膵切除量が同じグループのものでは,肝切除量が大きい程死亡率が高く,その主な死亡原因は肝不全であるという成績が得られた.1989年水本教授の全国集計では,胆道癌の中でHPD施行241例をみると,手術死亡は17%と高く,Healyの肝2区域以上の肝切除併施例では81例中57例(70.4%)に合併症が発生しており,その中でも術後の肝不全が39.5%と高率であった.
我々の実験成績と全国集計から拡大右葉切除のような肝2区域を超えるHPDでは,合併症や術後死亡の多いことを各学会に報告してきた.その学会の一つである第90回日本外科学会では,「肝胆膵領域における拡大手術の意義」のシンポジウムの際,「HPDの基礎的並びに臨床的検討」を発表し,我々の臨床成績もほぼ全国集計と同じであった.
1990年以後全国的にHPDが施行されているが,合併症や死亡率は確かに減少してきている.
しかし,1994年に我々のcriteriaを破り,拡大右葉切除,膵切除兼門脈合併切除を施行したところ,術後MRSAを併発し, sepsis,肝機能障害,重症MRSA肺炎で術後72日目に亡くなってしまった.それ以後我々のcriteriaを守り,肝2区域未満としてHPDを6例に施行,現在のところ良好な成績を得ている.
2000年も終わろうとしている現在,本邦のHPDの全国集計,HPDの合併症,成績予後に興味を持つと共に,あれから10年経過した2000年の結果が知りたく企画したのである.
21世紀に向け,未来のある若い医師にとって卒後教育の一つになれば幸いである.

キーワード
肝膵同時切除, 術後合併症, 術後肝不全, 術死, 全国集計


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