[
書誌情報]
[
全文PDF] (3380KB)
[会員限定・要二段階認証]
日外会誌. 101(12): 855-860, 2000
特集
臓器別にみた外科手術の変遷・歴史
7. 胃癌外科手術の変遷・歴史
I.内容要旨1881年のBillroth教授による胃切除の成功は,胃の分野だけでなく消化器外科全域に夜明けを告げたものとして,その意義は極めて大きい.症状が激烈な癌性幽門狭窄からの患者の解放こそ,往時の外科医の開拓魂を鼓舞したのに違いない.言葉を換えると,このような胃癌が,消化器外科に夜明けをもたらしたことになる.
黎明期:19世紀末から20世紀初頭.この約20年間で,現在行われている胃手術の原型がほとんどできあがった.切除率は約20%,直死は50%にも及んだ.
大正時代から第2次大戦まで:切除率50%,直死率20%,5生率15%
第2次大戦後
1.手術拡大期:1970年代までの約30年間.胃切除,リンパ節郭清,合併切除臓器いずれの範囲も拡大された.この時期に,現在,標準とされているD2リンパ節郭清が完成されたが,合併症の多さなどから欧米などの諸外国からはD2批判が多い.
2.縮小手術の導入:1980年代より早期癌に対して行われるようになった.この基礎データとなったのが胃癌研究会(当時)が全国的に集積した膨大な成績である.縮小の内容は,胃切除とリンパ節郭清の縮小,大・小網,幽門,神経などの温存,開胸の節約などである.縮小の概念がさらに発展して,内視鏡的粘膜切除および腹腔鏡下胃切除につながった.
3.オーダーメード治療(現代):現在は究極のリンパ節郭清と思われる腹部大動脈周囲リンパ節郭清も多くの施設で行われるようになり,縮小(低侵襲)治療とあわせると,胃癌の治療法が多岐にわたっている.したがって,症例ごとにそれにふさわしい治療法を選択する,いわばオーダーメードの時代となった.切除率91.3%,直死率1.0%,5生率71.6%.
キーワード
gastric cancer, surgery, history
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。